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スパイラル~推理の絆~ / 紹介・レビュー

作品情報

表紙 スパイラル~推理の絆~
ジャンル ミステリー、サイコスリラー

作者

作画:水野英多/原案:城平京

連載雑誌

月刊少年ガンガン

連載期間

1999年~2005年

巻数

単行本:全15巻

ポイント

  • 犯人を見出す推理物ではなく、強いて言うなら知略バトル物。
  • 絶望的すぎる状況の中、信念に生きる強さを身に着けていく主人公。
  • やや救いの無いエンディング。
  • 最終巻が単行本史上最高クラスの分厚さ。

あらすじ(Story)

「ブレード・チルドレンの謎を追う」という言葉を残して失踪した兄を持つ少年「鳴海歩」(ナルミアユム)は、普通の高校生活を送っていた。
そんな日常の中、偶然殺人事件の犯人の疑いをかけられてしまう。自らの身を守る為、持ち前の推理力を駆使して事件を解決するが、真犯人はその「ブレード・チルドレン」の一人であった。兄の手掛かりを掴むべく謎を追うが、更なる事件に巻き込まれてしまい…。


長所(Good point)

絶望的な状況を論理と推理で切り抜けていくストーリー

 
  • 主人公は常々殺されそうな状況へと追いやられるが、それを論理と推理で切り抜けていくのは見ていて爽快感がある。

  • また、主人公は「天才だが更に優秀な兄にコンプレックスを持ち、自分に自信が無い」という珍しいキャラで、敗北を繰り返して精神的にも強くなるという一面もある。

かなり毛色の異なる推理物

 
  • 本作は通常の推理物の様な【事件発生⇒推理⇒犯人逮捕】といった内容ではない。

  • 各シナリオの勝利条件は異なっているが、兵器や戦闘能力を持った相手に推理と論理で守るべきモノを守るストーリーとなっている。

  • 特に特殊な勝利条件はカノン編で、「圧倒的戦闘能力を持つカノンを殺さずに無力化する」というものだが、あらゆる不意打ちに100%反応出来る戦闘反射能力を持ち、容易には行かない状況を何手も仕掛けて攻略する様が面白い。

  • 最初から「ブレードチルドレン」や「失踪した兄」等の謎(伏線)が多く散りばめている為、最後まで読み進められる引力を持っている。

感想(Review)

本作は1999年~2005年にかけて月刊ガンガンで連載され、アニメ化もされました。当時かなりの人気を誇っていた作品だったかと思います。個人的にはガンガンの中でトップクラスに好きです。(アニメは原作に追いついた関係で未完で終わっている上、管理人的には一部キャラ崩壊を起こしていると捉えている為オススメできません)
サブタイトル通り、推理が主なテーマとはなってますが、前述の通り一般的な推理物とは大きく異なります。簡単にではありますが、以下に各エピソードのあらすじをメモがてら綴ってみます。


冒頭
主人公「鳴海歩」は優れた頭脳と才能を持つ少年であったが「あらゆる面で自身を上回り、親と初恋の人(まどか)の愛を一身に受けた兄」がいた為、強烈な劣等感を持ちながら毎日を平凡に過ごしていた。
そんなある日、兄は「ブレード・チルドレンの謎を追う」といって、妻(まどか)を置いて失踪してしまう。その後、悲しみに暮れる義姉(まどか)を慰める為、兄のマンションに住む事になった。その後、歩自身が事件に巻き込まれるが、優れた情報収拾役のヒロイン「結崎ひよの」の協力を得て、事件を解決。犯人が件の「ブレード・チルドレン(以下ブレチル)」である事を知った歩は、さらに推理を進め、兄の影を追う様になるのだった。

VS理緒編
その後、ブレチルはある事情から危険因子とされて世界的に命を狙われた優れた子供達である事が判明。
兄である清隆は、ブレチルに対して「歩はブレチルを救える可能性を持つがまだ未熟。成長させる為に『天使の様に公平なルールをもって、悪魔の様に狡猾に殺す事』を許可する」としていた。
その後、ブレチルの中でも優れた頭脳を持つ「理緒」に前述のルールで勝負を仕掛けられ、敗北する歩だったが、ひよのの命を賭けた機転で再戦する事に。しかし、ひよのを人質に取られてしまう。ひよのを取り返すべく、お互いが求める「証拠テープ」を賭けて頭脳戦を行い、歩は辛くも勝利を収め、精神的に成長を遂げるのだった。

VSカノン編
理緒に頭脳戦で勝利し、歩はブレチルをとりまく運命に向かい合う覚悟を決め、ブレチルからは一定の信頼を得る事に成功する。一方、ブレチルの少年「カノン」が来日。「僕達ブレチルはいずれ世界を絶望に陥れる存在だ。ブレチル全員を殺して自分も死ぬ」といった趣旨で自身の友でもあるブレチル達に反旗を翻す。
カノンは歩の通う高校に入学し「圧倒的な暴力は論理に勝る」と言い放ち、高い格闘能力で歩をKO。その後、高校を占拠してブレチルの集合を要求するのだった。
優れた頭脳と高い戦闘能力、あらゆる不意打ちに対して100%反応出来る「戦闘反射」を行えるカノンに勝機を見いだせず、ウジウジする歩にひよのは発破をかけ、さらに命をかけてカノンを足止めする事に成功する。僅かな時間を得た歩は、理緒達の協力を得てカノンと重火器バトル。何手もの戦略を駆使して見事カノンを麻酔銃で無力化する事に成功するのだった。

火澄編
ブレチル関係者達から「ブレチルは天才的な能力を持つが、成人するとスイッチが入った様に人間に敵対する遺伝子を持った存在」と聞かされ、さらにブレチルの遺伝子元である「ヤイバ」はブレチル同様の特性を持ち、人間を絶滅させる為に「造物主が遣わした悪魔」と揶揄される男だった。
ヤイバはあらゆる戦略・兵器・運命でも死を与える事が出来ない男だったが「造物主が遣わした逆存在である神」清隆にはあっさり殺された事を知る(清隆もまた、絶対に殺されない運命を持つ)。
しかし、ヤイバには弟「火澄」がおり、これは清隆でも殺す事は不可能だった。歩は火澄を唯一殺す事が出来る「もう1人の神」である事を聞かされる。その火澄と歩はひょんな事から同居する事になり、その後の調査から「歩・火澄はそれぞれヤイバ・清隆のクローンであり、成人まで生きられない」という、ブレチル勢よりも過酷な運命を背負わされている事を知る。
火澄は残された短い人生を、同じ歩に「殺されるか、共に歩んでいくか」を早急に選択させる為、カノンを殺害してしまうが、歩はこのどちらも選ばず、孤独に強く生きる事でブレチル勢の希望になる事を決断するのだった。
一方、清隆は「自身という神を歩が殺し、それをキッカケにハンター(対ブレチル暗殺組織)がブレチルを全滅させ、盤面をゼロにする」と目論んでいた。歩に兄を殺す意思は無かったが、歩が唯一信頼を置いていたひよのは、実は清隆が用意したキャラクターである事を発覚させられ、殺意を燃え上がらせるが、歩はそれでも「誰も殺さず、残された人生を懸命に生きる」という自身の信念に従い「ブレチルの希望になり、清隆もその助けになる様全力でサポートしろ」と説得。初めて「自身の思い通りに事が運べなかった」という形の敗北を喫した清隆は、歩の要求を受諾するのだった。
それから数年。歩はクローンならではの身体の衰えを苦しみながらも懸命に生きていた。ブレチル達もその姿に励まされながら、自身が悪魔にならないよう、運命と懸命に戦うのだった。


超ざっくり書くとこんなあらすじです。というか、短く纏められる程、この作品は浅くありません。良くも悪くも複雑です(´▽`;)

個人的には「理緒編」と「カノン編」が面白かったですね。バトル絡みだから、というのもありますが。特にカノン編については、歩の勝利条件は「カノンの無力化」とシンプルですが、敵役であるカノンの勝利条件が「歩に殺される事」というのが異色。
カノンは「不意打ちに対して無意識に100%反射行動を起こせる」「5階から飛び降りても平気なくらい強靭な身体能力」等のチート能力の持ち主で、まともに麻酔弾を当てるのが難しい。しかし「ブレードチルドレン以外の人間は絶対に殺さない」というカノン自身が課した制限を利用して、ブレチル以外が手榴弾を投げつつ特攻をかける事で「カノンは敵の攻撃を凌ぎつつ、その敵を手榴弾から守らなければいけない」状況を作る等、カノンがもつ制限をフルに活かした戦略が面白い。

ただ、最後の「火澄編」に入ると、造物主だの神だの悪魔だのと、ややファンタジーじみてきたのがちょっと残念でしたね。勿論神だの悪魔だのは比喩なのですが、実際に高さ70mから飛び降りても死ななかった火澄や、銃で自殺を図ったが不発で死ねなかった清隆を見ると、ファンタジーとしか思えない。ボトムズの異能生存体か君らは!?(゚Д゚;)
こういうのが絡んでくると一気にリアリティを失う為、ちょっと冷めてしまう。これまで一応論理で戦ってきただけに尚更。エンディングは個人的には悪くはなかったですが、ブレチルの成功例が結局描かれていないので、悪い未来しか想像出来ないのがちょっと…(´Д`|||)

総評として、「良く練られた良作だけど、ややこしくて救いが無い」という所でしょうか。バッドエンドが嫌いな人は合わないかも。

しかしキャラ的にはわりと好きだったりします。特に主人公&ヒロイン。主人公である歩はこれでもかってくらい不幸な要素しかありません。陰では大声で泣き叫んでしまいたいと言う描写もあります。すがるモノも無く、余生は短いが、常に強い自分を見せ続けなければならない、と生き地獄にも等しい状況だが、他者の為に自分の信念を貫いている事はマジで尊敬に値すると思う。
この魅力的なキャラクター像は原作者である城平京氏の好みなのか、同じくガンガン連載の「ヴァンパイア十字界」にも継承されています。個人的にはこちらの方がストーリー理解が容易でお勧めです。

それにしても凄いのはヒロインの行動力ですね。歩を成長させるべく、命を賭けた事は1回や2回じゃありません。
①謎解き爆弾の熱感知器を自ら握って30分延長させ、歩に謎解きの時間を与える。


当然謎解き出来ないまま30分経過したら爆発してひよのは死ぬ。歩は歩で「お手上げの爆発物処理班は邪魔だから叩き帰した」って…少年達を残して帰る方も帰る方だが(´Д`|||)

②毒水ロシアンルーレットでひよの自らが水を飲む
理緒は「水と毒」のロシアンルーレットを歩に提案するが、歩は「そんな行動に意味はない、どちらも水だ」と推理し、軽く飲んだら苦く、毒と思い驚愕する。しかしひよのは歩の推理を信じ、自らがその苦い水を飲み干して見せる事で歩の敗北をひっくり返して見せた。



③あえて人質になって歩に発破をかける。
理緒が不利になる言質を取り、歩にテープを渡して逃がし、自身はあえて人質になる。(スタンガンを持っていたので、逃げようと思えば逃げられた)


歩を成長させる為の行動だが、これにしたって命を賭けている。テープを回している機転といい、天才集団であるブレチルを手玉に取っている時点でタダ者ではない。

④カノンの前でリストカットして足止めの時間を稼ぐ
戦略を練る歩の元へ向かうカノンに、時間稼ぎの為に言葉を投げかけるひよのだったが、「じわじわと迫る死と絶望の恐怖も知らない人間に何が分かる!」というカノンの言葉に対し「簡単に知る事が出来ますよ」と言うがいなやリストカット。驚愕し、ひよのの言葉を無視出来なくなったカノンは思惑通りに時間を稼がれてしまう。

どれも歩がミスったら死んでるシーン(゚д゚|||) これほど勇ましく頼りになる男らしいヒロインは他にいただろうか?

まるで強い母親の様な勇ましい存在であるひよのだが、その一方で
歩に対して好意を持っている素振りも見受けられる。





控え目に言って可愛い。一般的には理緒ファンが多かった様ですが、個人的には圧倒的にひよの派。しかし「結崎ひよの」は清隆によって「歩を成長させる為に用意されたキャラクター」に過ぎないのだが、それだけでここまで命を賭けたり出来るだろうか?
ひよのを演じていた本人いわく「時には自身の判断で行動した」という事なので、これまでの行動や前述の発言に嘘はないのだと思いたい。歯を食いしばって最期まで信念に生きた歩と、その歩を信頼と情報能力でサポートしたひよのは、個人的には凄い好きでした(´▽`)


おまけ:誤植ラッシュ


セルオートってなんやねん。正しくはセミオート?フルオート?


「ナルミアユム」になるハズが「アルミニウム」になっている。普通に存在する固有名詞になっていると笑うしかない。しかも極めてシリアスなシーンなので尚更。


「ハンター」が「センター」しかも2度。野球かな?(´Д`|||)


追記
改めて単行本を見直したら、原作者である城平京氏が、ネーム時点で誤字を多発してしまい、それをそのまま印刷という流れになってしまった旨の裏話がありました。ストーリーが難解な為に、編集者も気づかないという事も多いのかな…それでもアルミニウムくらい気づいてくれと思ってしまいますがw


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