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●湾岸ミッドナイト - 漫画レビュー

作者
楠みちはる
湾岸ミッドナイト
ジャンル
カーバトル
連載雑誌
ビッグコミックスピリッツ⇒週刊ヤングマガジン
連載期間
1990年〜2008年
巻数
全42巻
ポイント
・車のウンチク多数
・車に人生を捧げた男達のポエム多数
・カーバトルそのものよりも、その過程を重視している


GOOD POINT(長所)

●車のウンチク
車のチューンと人間ドラマを描いた作品の為、車に関する話題はハンパない。
車に携わっている度合い=この漫画の面白さに繋がる。
(管理人は二輪派なので正直車には強くないですが、興味ある程度の教養でも楽しめました)

●名言ポエム
「地獄のチューナー」北見を始めとした数々の人間が名言を残していく。
それらは人生の中で「あるある」と思わせたり、どこか惹かれる考えだったりと心に響くモノを秘めている。


COMMENT(概要・特徴)

●概要
主人公「朝倉アキオ」がふとした事で手に入れた初代フェアレディZは、かつて「悪魔のZ」と呼ばれたハイチューンマシンだった。
その車はかつてのオーナー達も含めて多くの人を不幸に陥れたと言われるいわく付きのマシンであったが、主人公もまたその魅力に惹かれて首都高を駆るようになる。
そして悪魔のZに惹かれ、挑み、そして消えていく者達の物語でもある。

●時系列
本作の時代背景は漫画の連載とリアルタイムに進んでいる為、数々の新しい車が顔を出す(序盤はR32が最新、話が進むにつれてR33、R34が出る等)
終盤ともなると折り畳みケータイで連絡する等のシーンも出てくる。
しかしキャラクターの年齢は進む事がなく、主人公に至っては永遠の高校三年生ということになってしまっている

●勝敗の曖昧さ
カーバトルの漫画として名高いのは「頭文字D」等が挙げられる。あの作品の場合「峠でバトルを行いゴールまでに追い抜く(あるいは逃げ切る)事で勝ち」とハッキリしているが、
本作では首都高での競り合いを描いており、スタートとゴールを定めたバトルになっていない。「勝ったか負けたかは、本人達が一番よく分かっている」という事になっている。
言っている事は分かるし、実際エンジンブロー等のトラブルをもって勝負が終わった事もあった。
「勝負が曖昧」だからつまらないのか?と言われるとそうではない。というかある意味勝敗は二の次なのではないかと思う。


悪魔のZに勝つ為にチューンをし、ドラテクを身に着ける。その過程で得るモノがあったりといったドラマがあるのが面白い。
さらに車に詳しい人ならば、どのようにチューンして勝とうとするのかという楽しみがプラスされる作品です。

●名場面・名セリフ集


2巻 P.96

「き…ッ きたあ!」
「あのZの音だ―――!」
「よ―――しッ!よしッよしッ!」
「いい音だ―――――ッ!」
「悪魔のZ―――――ォ!」
姿を現した「悪魔のZ」に、
地獄のチューナー北見さんがハンパなく興奮する。
別に名場面じゃないですが、
北見さんがここまで興奮する事って今後無いんですよね。
それだけZに対する想いがあるのか、
それとも漫画が進むうちにキャラが変わったのか(だとしたら身もふたもないw)


3巻 P.167

「くくく…だからどうしたってゆーんだ それが…?」
「無理だろう、いくら理屈並べても…お前はもう見てしまったんだ、悪魔のZを」
「お前はまた走り出すしかないんだヨ」
かつて車にのめり込み、その結果妻を流産させてしまった過去を持つ男 平本。
その後は走り屋としての活動は辞め、妻を労わりながら仕事をしていたが、
悪魔のZに出会い、走り屋としての自分が再燃する。
しかしもうあの時の自分に戻るワケにはいかない。
そう思っていた所に北見さんが鬼の一言で走りの世界へと引きずり込む。

まさに悪魔のささやき。
一見他人事のように軽く言ってるように見えるけど、
ここで自分に白黒付けておかないと、これからの人生は後悔に彩られるぞ。
と言っているんでしょうね。


4巻 P.60

レベルの違うブラックバードを無理に追ってエンジンブローした原田の車を見て北見さんが言う言葉。

「ヤッてしまったな…」
「止まらなくていいゾ、いってしまえ」
「エンジンブローは無知ゆえの結果、助ける必要などない」
正直、原田くんの事は「ダサッ」と思いました。
カーバトルはやった事ないですが、二輪乗りの気持ちとしては自分の愛機を感情でブッ壊すなんて愚の骨頂です。愛が足らんね。
実際この後平本さんが同じようなシチュエーションになりますが、ブローするまで無理に追ったりはしませんでした。

でも原田くんはこの後 心の成長を見せます。
そういう所も本作のイイ所なんでしょうね。


4巻 P.101

久々に板金をやるキッカケになったアキオに対して。

「…アキオ」
「…アキオ」
「アキオ―――――ッ」

「ウーロンだオレ!」

この頁だけだとサッパリですねw
忘れかけていた板金への情熱を思い出させてくれたアキオに対する想いが感じられるシーンです。

この後も多くの人がアキオを助け、教えていく事になります。
この時点ですでにカリスマ性を滲み出しているな…
(主人公補正とも言う)


6巻 P.146

「ま、でもアオキくんも19だし!」
全然名場面じゃないですが…(むしろネタ)
6コマ目で主人公の名前に誤植があり「アオキくん」になっている。     
1字ズレるだけで苗字みたいになる不思議w


10巻 P.231

「壊れるエンジンには壊れるワケがあり、事故った奴には事故るワケがある」
「たまたまとか偶然運が悪くてとか…そういうのはないんだ」
「なるべくしてそうなる理由が、いつも必ずある」
全ての事柄には理由があり、運で片づけるモンじゃないという事でしょう。
「ツイてなかった」で終わらせるよりは、原因究明に乗り出した方が前向きですよね。

類義語を挙げるなら「ボクシングにラッキーパンチは無い」といった所でしょうか。


23巻 P.33

城島さんが駆るポルシェ964に同乗した北見さんが「見事だな」と評価する。
それに対して車の論評を始めた城島さんに向かって北見さんは
「いや、オレが見事と言ったのはお前だヨ」
「こんなゴミをよく首都高であそこまで走らせるもんだ」
車のダメージと城島のドラテクを見抜いたセリフであるワケですが、
名言かと言われると
別にそうではないです。
ただインパクトはありますよね。
ゴミって…w


27巻 P.92

「こうなるであろうと仮説を立てて、結果 失敗するのと とりあえずやってみて失敗したのは全然違う」
「わかろうとする努力もせず、とりあえず やる」
「それはトライ&エラーじゃない、ただの無駄だ」
個人的に一番好きなセリフです。
生き方のスタンスが合っているだけかもしれませんが。
どんな事もノープランでやっても良い効率は出せないし、
ある程度の目算を持って挑まなければ、例え成功しても得るモノは期待出来ないと思っているので。


28巻 P.15

仕事の時間に追われる後藤を見て富永さんは
「今すぐとか、今日明日とかでなく、長いスパン(幅)で仕事を見ようって」
「それはそれで間違いじゃなかったけど、でもそれは自分も若くて未来も永遠と思っていただからでもあるのヨ」
「歳をとると少しまた違う考えも出るわけ」
「限られたターム(期間)の中でやるコトも、また本物だろうって」
「時間に追われる仕事、いいじゃないか」
「限られた条件の中で評価されてこそ金を取る仕事だろ」
仕事に追われて毎日アップアップ。
そんな中のプラス思考な考えですよね。
「こんな短時間の中で、出来る限りのベストを尽くしてやったぜ!」
という充実感が得られる考え。
RPGゲームに例えるなら低LVクリアに挑むような感覚でしょうか(違


36巻 P.113

「ある意味生きていく事は外からかかり続ける『圧』との戦いだ…と」
「そしてそれに呼応するように突然自分の中からも圧が上がってくる」
「意味の無い苛立ちや、止まらない怒り、分からない喪失感…」
「ストレスというそんな言葉では済まされない、何か人としての本能にあるモノ、それが出る」
「沸き上る内圧、それをどう持っていくか…だ」

「飲み込むように、その負の圧を自分の正圧にかえてゆく」
「ストレス解消という他への逃げでなく、沸き上るモノを飲みこまなければ…一生自分の圧など作れない」

「走る事でストレスが生まれるのなら、それはお前の圧がその行為に負けているだけ」
「それが出来なければソコから降りるしかない…」
上記【28巻 P.15】の言葉に似てる所がありますね。
例えば仕事をしていて、ストレスに感じる部分がある。それをプラスに考えられるかどうか?
ストレス解消という逃げではいつまでも続かない。
それが出来なければ、その仕事は自分に合ってないのだろう。

「負の圧」を「正の圧」に。出来たら良いですねぇ…w


39巻 P.83
「ゼミの先生がよくメスの入れ方について熱弁したんですよ。出来るだけ跡の残らないようにメスを入れるのが本当の技術だと」
「時代はすでにレーザーメスで、何を今更と思いましたね。傷跡の評価は治療とは関係ない、大事な事を間違えてる…と」
「気づきました…わからないと人はバカにしてしまうんですね」
「僕の911は見る程に細部まで手抜きがないんですよ。人の手による妥協ない仕上がり、『確か』さがラフな扱いをさせない…」
「その事でどれほど僕の走りが救われたか」
「軽ければ良い、パワーがあれば良いじゃないんですね。雑なクルマは雑な走り方に必ずなってゆく」

色んな意味合いが込められている気がしますね。

かつては職人芸でないと出来ない事が、今では最新技術で容易に可能。
その仕事の結果は同じかもしれない。だがその仕事にかける心意気や覚悟、丁寧さまでは乗ってこない。

技術向上多いに結構。しかし初心を蔑ろにするべきではない。
または、その結果の先に待つ想いを汲み取る…等ですかね。

料理漫画なんかにもよくある「思い出の料理>高級食材」みたいな展開にも当てはまる?(違


41巻 P.16,17
車をいじるのに夢中になっていた北見さん
「あまりの空腹にまる一日 何も食っていない事にやっと気づく。寝る時間も食う時間も惜しい。それぐらいとりつかれていた」
「限界になると近所の食堂でメシをかき込み、仕事へ戻る毎日」

「ある時…店を出ると雨になってた」
「小走りで仕事場で戻る交差点…オレは白いセダンの前で立ち止まった」
「楽しそうなカップルが乗っていた」
「恋人同士か、それとももう夫婦か。歳もオレと同じぐらいの二人だった」
「あの頃のオレはチューナーとして行き詰っていた」
「オレの組むEgは客を選び、結果として客は離れていった」
「本当に幸せそうな男女だった。対し、雨に打たれる作業着のオレはみじめな姿だろう」

「…だが、オレの方が絶対に幸せだと思った」
独身野郎としては最高に羨ましいシーンである。
勿論北見さんの方が。

世間一般から見れば、可哀そうとも取れる状況である北見さんだが、
本人は誰よりも充実しているのだ。
オレもそうありたいモノですw


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